
世界中の人形好きを魅了する、フランス人形の「ジュモー」の魅力とは
ビスクドールに心惹かれる皆さま、こんにちは。
私は40歳を過ぎて、突然に「粘土から人形が作りたい!」と思い立ち球体関節人形教室の門をたたきました。そうして何の知識もないところから、アンティークドールやグラスアイの世界にはまりました。アンティークドールといえば「ジュモー」。それくらいに憧れの存在。
今回はビスクドールの黄金時代を築いたフランスの巨匠、エミール・ジュモーが手がけた人形に焦点を当ててみます。その歴史、時代ごとの特徴、そして私たちのような人形好きが「本物」を見分けるためのポイントを、一緒に見ていきましょう。
ジュモー工房の輝かしい歴史
ジュモー(Jumeau)工房は、19世紀中頃から20世紀初頭にかけて、フランスで最も有名で影響力のあるビスクドール製造会社でした。その人形たちは「フランス人形の女王」と称され、今も世界中のコレクターに愛され続けています。
エミール・ジュモーの登場と工房の隆盛
ジュモー工房の創業者であるピエール=フランソワ・ジュモーは、1840年代に会社を設立しました。でも、工房を世界的ブランドへと押し上げたのは、彼の息子であるエミール・ジュモーなんです。彼は、ビスクドールの美しさをとことん追求し、特に人形の顔立ちに比類ない芸術性を与えました。
当時の人形は、大人向けのファッションドール(フランス語で「プペ」)が主流でしたが、エミールは「ベビー」と呼ばれる子どもを模した人形を開発しました。その愛らしい表情は市場を席巻し、この「ベビー・ジュモー」の大成功により、ジュモー工房はビスクドールの頂点に上り詰めたんですよ。
芸術性の追求と工房の終焉
ジュモー工房は、人形の顔立ちだけでなく、美しい衣装や高品質な素材にもこだわっていました。しかし、20世紀に入ると、ドイツ製の安価な人形に押されて、経営が難しくなってしまいます。最終的に、ジュモーは他の大手人形会社と合併し、「SFBJ(Société Française de Fabrication de Bébés et Jouets)」という巨大な会社の一部となりました。
このため、純粋な「ジュモー」工房として作られた人形は、19世紀末から20世紀初頭のごく限られた期間にしか製造されておらず、その希少性が価値をさらに高めているんです。
時代で変わる顔立ちと表情の魅力
ジュモーの人形は、製造された年代によって顔立ちや特徴が微妙に異なります。この違いを理解することは、人形の価値を見極める上でとても大切なポイントです。
- 初期のジュモー(1860年代~1880年代初頭)
- この時期はまだファッションドールが中心でした。顔立ちは比較的シャープで、大人びた表情をしています。
- 特徴:目の周りが黒いラインで縁取られ、瞳はグラスアイ(ガラスの目)が使用されています。
- 黄金期「ベビー・ジュモー」(1880年代~1890年代)
- ジュモーの代名詞とも言える、子どもらしい愛らしい顔立ちが特徴です。
- 特徴:大きなグラスアイ、ふっくらとした頬、柔らかな唇が描かれています。特に、「オープンマウス」と呼ばれる口を開けて歯が見えるタイプは、生き生きとした表情で今も大人気です。
- 後期ジュモー(1890年代後半~)
- ジュモー工房がSFBJに移行する前の、最後の時期です。顔立ちはさらに繊細になり、表情もより豊かになりました。
- 特徴:オープンマウスに加えて、「コンポジション・ボディ」(木屑や糊などを固めた素材の胴体)が使われ始めました。
本物を見分けるための3つのポイント
アンティークドールを探していると、「本物」かどうかが気になりますね。偽物や修復された人形も多く出回っているので、私たちも以下のポイントに注目して、丁寧に確認するようにしましょう。
頭部(ヘッド)に刻印されたサイン
ジュモーのビスクドールには、頭部の後ろ側に「Jumeau」や「Tête Jumeau」といった刻印や、工房のマークが打たれています。また、製造番号やサイズを示す数字も刻まれていることが多いです。
- ポイント: 刻印がはっきりしているか、不自然な後付けの跡がないかを確認しましょう。ただし、中には刻印がない個体も存在するので、他の要素と総合的に判断することが大切だと思います。
目の特徴と瞳の美しさ
ジュモーの人形の目は、高品質なグラスアイが使われています。特に黄金期の「ベビー・ジュモー」は、「ペーパーウェイトアイ」と呼ばれる、ガラスの塊で作られた特別な目を持つものが多く、光の当たり方で色が変わる美しい輝きを放ちます。
- ポイント: 目のガラスが澄んでいるか、白濁していないか、また、左右の目の色が揃っているかを確認しましょう。
ボディと衣装のオリジナル性
ジュモーの人形は、オリジナルのボディや衣装が揃っているとその時代のそのままを感じとれます。
- ボディ: ジュモーオリジナルのボディには、足裏や首の付け根などにマークやスタンプが押されていることがあります。
- 衣装: ジュモー工房は、人形に合わせた美しい衣装も製造していました。オリジナルの衣装が残っているかどうかは、見ただけではわかりにくいですが、素材などじっくり観察してください。
まとめ
ジュモーのビスクドールは、昔は子供のおもちゃでしたが、今では19世紀末のフランスの高度な技術と芸術性を物語る、小さな美術品です。お値段も手が出せない…くらいです。その歴史を知り、時代ごとの顔立ちや特徴を理解することで、人形の魅力はさらに深まります。
もしお迎えを検討されている方がいらっしゃったら、焦らずにじっくりと、「運命の出会い」を探してみてくださいね。
【豆知識】 かつて、日本の皇族がフランスを訪れた際、ジュモーの人形を贈られたという逸話が残されています。また、フランスの上流階級の少女たちは、ジュモーの人形をまるで本当の子どものように大切に扱い、豪華なドレスを仕立てて遊んでいたそうですよ。
参考になるURL
https://www.jumeau-dolls.com/ (Jumeau Doll Museum)
https://www.theriaults.com/ (Theriault’s Auction Gallery)
